シナリオ
明日、6歳になる少年が、誕生日前にお父さんに言われた。
「もう、赤ちゃんじゃないんだ。外の世界を見せてやる」
今まで自分の足で家を出て遠出なんて品たこと無かった少年。
翌日誕生日を迎える夜。少年は外の世界で飛び出した。
登場人物
①ケイタ(主人公幼少期)
②パパ(ケイタ青年期)
③ママ
小さな冒険者は勇者になってヒーローになりたい
ケイタ:いいかい?今から話すのは、ボクが6歳の頃の話だ。忘れもしない、初めての冒険の時の話だ。
俺は、我が子が6歳になる今日、自分が6歳になったときの事を、思い出していた。ブランデーを片手に。
ケイタ(6歳):ママー。パパ、今日も帰ってこない
ママ:ケイタ、パパはお仕事で忙しいの。大丈夫。日をまたぐ前には帰ってくると思うわ。
ケイタ:ママ、ボクはもう大人?
ママ:ふふ、まだまだよ。この間だって、怖い夢を見たって夜中に泣きついてきたのは誰だったかしら?
ケイタ:夢だって分かってたら怖くなかったもん。
ママ:夢は、楽しまなくちゃダメよ。
ケイタ:どうして?
ママ:だって、行ったことのない所へも行けるし、したことない経験も出来るのよ。素敵じゃない。私は、夢は夢と気づきたくないわ。それがイヤな夢だったとしてもね。朝が来れば覚めるもの。覚めない夢はないわ。
ケイタ:なんか難しい
ママ:あなたが大人になったら分かるわ。
ケイタ:ぼく、早く大人になりたい
ママ:どうして?
ケイタ:ボクね、いろんな所に行くのが好きなの
ママ:一人で外に出ることなんてないじゃない。せいぜい目の前の公園まででしょ?
ケイタ:ちがうよ、パパのブーブーで遠くに行くの好きなの
ママ:ほら、まだ子供じゃ無い。ブーブーはもう卒業って行ったでしょ?車よ?
ケイタ:分かってるもん
ママ:たしかに、スーパーまで行くのも、私の自転車の後ろに乗せて行ってるもんね。
ケイタ:ボクの足で歩いて遠くまでいきたいの
ママ:一人じゃダメよ。危ないわ。
ケイタ:やだ!いくの!
ママ:あれ?パパ、もう帰ってきたのかな?
-ドアの開く音-
パパ:ただいま
ママ・ケイタ:おかえりなさいー
パパ:ママ、お風呂、沸いてるかな?すごく汗かいちゃって
ママ:沸いてるわよ。
-お風呂から上がる-
パパ:良いお湯だったよ。ケイタ、まだ起きてたんだね。ケイタ、早く寝なさい。
ケイタ:やだ。
パパ:どうしたんだ?眠れないのか?
ケイタ:パパもママも寝てないから寝ない
パパ:早く寝ないと、大きくなれないぞ。
ケイタ:・・・
パパ:今日のご飯も、おいしいよ。いつもありがとう。こんな遅くまで
ママ:冷えてない?さっき温めたけど、味落ちちゃってるかも
パパ:おいしいよ。
パパ:ごちそうさま。
ママ:ビールで良い?
パパ:うん。・・・あ、いや、ブランデーがあったろう。
ママ:ブランデー?珍しいわね。今持ってくるわ。
-ブランデーを飲む-
パパ:ケイタ。寝ないのか。もう11字だぞ
ケイタ:寝ない。大人は遅くまで起きてる
パパ:ママ、ケイタどうしたんだ。大人になりたい年頃か
ママ:明日6歳になるからって、急に大人に憧れてるのよ。まだ早いって言ってるのに。
パパ:ケイタ、こっちに来なさい
ケイタ:うん
パパ:ケイタ、大人になりたいのか?
ケイタ:うん
パパ:大人になるにはな、いくつも試練を乗り越えなきゃ行けないんだ
ケイタ:試練?
パパ:あぁ。勉強だったり、スポーツだったり、冒険を乗り越えたり。
ケイタ:冒険?パパも冒険したの?
パパ:あぁ、したさ。ケイタと同じ、6歳になる時に。
ケイタ:冒険したい!
パパ:そうか、冒険は危険が一杯だぞ?やり遂げられるか?
ケイタ:出来る!やってみせるよ!
パパ:たくましい目になったな。ママ、ちょっと外出てくる
ママ:はい?何言ってるの?今何時だと思ってるの!?
パパ:すぐ帰ってくるから。夕涼み。酔い冷ましさ。
ママ:危ないところには連れて行かないでよね。すぐ帰ってきて。食器洗って待ってるわ。
パパ:ありがとう。
パパ:ケイタ、行くぞ
ケイタ:うん!!
パパ:ケイタ。お前、どこまで行ったことある?
ケイタ:そこの公園まで
パパ:そうか、じゃあ、あっちまで行くぞ。見えるか?林に川、深夜の暗闇。
ケイタ:うん・・・
パパ:怖いか?
ケイタ:あっち、真っ暗だよ
パパ:大人は、先の見えない道を歩けなきゃいけないんだ。一人で。大切な人を連れて。
ケイタ:・・・行く。
-二人、林の方へ歩いて行く-
ケイタ:うわ!!
パパ:どうした?
ケイタ:今黒いのが目の前に!!
パパ:あぁ、そいつか。コイツは、コオロギっていうんだ。見るのは初めてか?
ケイタ:初めて、大きいね。怖い。襲ってくるの?
パパ:ケイタの体が大きくなったら、小さくて可愛く見えるさ。それに、そいつはプロの音楽家なんだ
ケイタ:音楽家?
パパ:楽器を弾くのがとても上手なんだ。ほら、目を閉じて、周りの音を聞いてごらん。
ケイタ:うん。・・・なんか、リーンリーンリーンって聞こえる。すごくキレイ。
パパ:その音を奏でているのは、今ケイタが怖がった、コオロギなんだ。
ケイタ:そうなの!?すごい子なんだ!!
パパ:そうさ。もう一度、コオロギを見てごらん。怖いかい?
ケイタ:・・・。怖くない!!お友達になりたい!!
パパ:そうだろ?怖いと思ったもの全てが、本当に怖いものとは限らないのさ。
パパ:川の方へ降りてみよう。
ケイタ:ママが川は危ないから絶対に近づいちゃダメって!
パパ:そうだよ。命に関わる。今回の冒険で一番危険な場所さ。ここに一人でこれるようになるには、まだ10年はかかる。
でも、今日は特別だ。パパは強いからな。一緒に川へ行く。大人になりたいんだろ?
ケイタ:わかった。
パパ:離れるなよ?
ケイタ:うん。
-暗闇を進み、川へと到着する-
ケイタ:うわ!!
ケイタ:なんか今、川から出てきた!!
パパ:魚だな。あれは、まだ弱い魚だ。大丈夫。ケイタも毎晩食べてるだろう?
ケイタ:おさかな!!
パパ:そう。川にも、小魚がいる。海の魚よりは小さいけどな。
ケイタ:なんか、自分の足でいろんな景色見ると、楽しい!!知らないことたくさんある!!
パパ:これから、もっと見たことの無い景色が見られるよ。虹色の虫、庭の木よりも大きい動物、黄金の太陽と、オレンジ色の太陽
ケイタ:想像できない!すごい!
パパ:そのためには、大きくならなきゃ行けない。
ケイタ:うん。
パパ:元気に毎日を過ごさなきゃ行けない。
ケイタ:うん。
パパ:ケイタ、まだ分からないと思うけど、忘れないで欲しいことがあるんだ
ケイタ:なに?
パパ:冒険は、危険を冒すこと。それでも果敢に挑戦するのが勇者。そして、負けないのがヒーローだよ。
ケイタ:パパはヒーローだよ!
パパ:ありがとう。ケイタはいつもそう言ってくれるね。ヒーローは、自分だけじゃなく、大切な人を守れなきゃいけない。
パパ:ケイタも、危険に勇敢に立ち向かい、大切な人を守れるヒーローになりなさい。それが、大人になるって事だ。
ケイタ:わかった。ぼく、たたかうよ!
パパ:頼もしいな。さ、今日の冒険はココまでだ。
パパ:おっと、日がまわっちゃったな。ケイタ、お誕生日、おめでとう。
ケイタ:ありがとう!これからは、たくさん冒険して、勇者になって、お父さんみたいなヒーローになる!!
パパ:たくましいな。さぁ、うちに帰ろう。
ケイタ:うん!!
-帰宅-
ママ:パパ、起きて。
パパ:あぁ、眠ってしまっていたのか
ママ:疲れてるのよ。今日は早く休みましょ?
パパ:そうだな。・・・。そうだ、あいつ、あした、6歳か。
ママ:そうね。久々にパパの休日と誕生日が合ったわね。
パパ:もう、寝たか?
ママ:寝かしつけたわよ。大変だったんだから。
ママ:眠れる獅子がね、明日はパパと山へ行くんだって聞かないから、お望みを飲んであげたわよ?
ママ:あなたが、あんな幼少期に富士山なんて登らすから・・・。明日は早起きしてサンドイッチ作らなきゃ。
パパ:立派な冒険者になりそうだ。
完。
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