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【フリー物語】わたしは、ただあなたの笑顔のために。

私は今年で70歳になるが

老人ホームにも入らないしコンビニの弁当に世話になったりしていない。

長年すごしたこの家で

毎日同じ時間を過ごしている。

同じ時間に起きて、料理をして、さんぽをして。

夜、また眠りにつく。

しかし、最近は体調が芳しくない日も度々ある。

もう歳だ、仕方がない。

体の不調は、今までの人生の良い事、悪い事、全ての積み重ねだと思う。

だから、仕方がないという言葉が似合うだろう。

憎む気持ちはこれっぽっちも湧いてこない。

そんな、体調が悪い日も、欠かすことが出来ないことがある。

亡くした妻に手を合わせること?

亡くした妻を悲しむこと?

いえ、料理です。

妻と出会ったあの日も、私は包丁を片手に、誰かの笑顔のために料理をしていました。

妻にプロポーズをしたあの日も、私はまな板の前で、妻の笑顔を願って料理をしていました。

妻が私の前からいなくなった日、あの日だけは、料理をしていませんでした。

だから、

私は、毎日、私と妻のご飯だけは欠かさず作っているのです。

おわり。

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