僕が小さな頃の話。
うさぎとおしゃべりしたよ、なんて母に言ったらしい。
あまり記憶は無いのだけれど、うっすら覚えてる事がある。
小さな頃は田舎に住んでたんだ。
周りには畑と林、川しかなくて。
里山って言うのかな?
それこそ、鹿やイノシシ、ウサギなんて珍しくもなかった。
小学校に上がったばかりの頃、母親とケンカして、1人で家を飛び出したんだ。
家の周りに街灯はあるのだけれど、
所々切れかけていて、周りに目印になる建物もないから子供が夜に1人で歩く光景なんて、危なくてどんな大人でも声をかける場所。
そんな場所で、あの夜、僕は1人、家から飛び出したんだ。
夕方6時くらい。間もなく夕焼けが別れを告げるところだった。
深く考えもなく、ただ家から遠ざかりたくて林の方へ走っていった。
案の定、道に迷って、辺りは暗く、静けさの中に鈴虫だけが鳴いていた。
次第に僕は寂しくなった
ずっと地面ばかり見て歩いていたのだけれど
気付けば、僕の目からは涙が溢れていた
ずっと、ごめんなさいと呟いて歩いていた。
家に帰りたいけど、道も分からず、
顔を上げると、ホタルノヒカリが見えた
綺麗だったので、夢中に追いかけていた。
ペチャッ
と音がして、僕は川辺に辿り着いていたことに気付く。
ホタルノヒカリは川の中央付近に集まっていた。
僕は馬鹿だった。
その光を追いかけようとしたんだ。
その時、僕の後ろに気配を感じて、
振り返ると、1匹の白いウサギがこちらを見ていた。
そして、うさぎに近づくと、目から涙を浮かべていた。
ウサギはゆっくりと後ろを向き、歩き出した。
僕はそのウサギに着いていきました。
ウサギは時折振り返り、僕の様子を伺っているようだった。
しばらくして、遠くに光が見えた。
林から出てこれたのだ。
その光に近づくにつれて、僕の家だとはっきり分かった。
家の周りは暖かな黄金の光に包まれており、
再び、僕がウサギを見ると、
その光で、しっかりとウサギを見ることが出来た。
コスプレをした、お母さんだった。
おわり。
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