黄金の指輪を君に。
僕は、1人の女性に恋をした。
彼女は突然、僕に言った。
「世界で1番綺麗な宝石がほしいの」
僕はお金もなく、宝石なんて、買うお金は無かった。
僕の仕事は、農家である。
毎年同じ作業の繰り返し。
心が踊ることも、ときめく瞬間も無い。
唯一、曇った瞳に生を感じられる時といえば、
作物が元気に芽を出した時くらいだ。
そんな僕の目の前に現れた女性は、
見るからに都会に生きる女性という感じで。
華やかで、明るくて、そして、笑顔が素敵な女性だった。
彼女は、僕の農場で育てているイチゴを、自分が新しく出す飲食店で使いたいと、言っていた。
僕は彼女に恋をした。
その後、何度か食事に行くことになり、付き合い始めたんだ。
そして、1年が経った。
いま、僕は彼女からのお願いを、どう叶えてあげれば良いか、分からずにいた。
ある日の晩、空を見上げてると、綺麗な黄金の月が浮かんでいました。
丸くて金色で。
僕は、この月を彼女にプレゼントしたいと考えました。
しかし、当然のこと、月をプレゼントするなんて、できません。
僕は、できないことばかりだ。
落ち込みました。
あぁ、黄金に輝く月よ。
そこに、本当に、かぐや姫がいるのなら、会わせて下さい。
ただ、話がしたいのです。
大切な女性に喜んでもらうにはどうすればいいのか、教えてください。
僕は、彼女の笑顔が、見たいのです。
それは祈りなのか、ただ月を見上げて呟きました。
そして僕は帰路につこうとしました。
家に帰る途中、月の光に照らされた雲を見て、
気付いたんです。
真っ黒な雲でした。
すると、雨が降り始め、雷がなり、強い風が辺りを覆いました。
だんだんと雨風は強くなっていき、今まで経験をしたことのない、嵐がやってきました。
家につくと、イチゴ畑のハウスが、壊れていたのです。
僕は、彼女が好きだと言ってくれたイチゴを守ろうと、
無駄な抵抗を続けました。
もうやめてください。このイチゴ達を奪わないで下さい。
ずっと口にして、直らないハウスを、また建てようと抗っていました。
そこに、彼女がやってきました。
「記録的な台風だって、心配で来たの。見て、木も倒れてる。危ないから、家に入ろ?」
彼女は止めました。
僕は、彼女を唯一笑顔にできるイチゴだからと、手を止めませんでした。
彼女は、言いました。
「あなたは、私の笑顔が見たいと言うけれど、あなたに何かあったら、私は泣くわ。あなたが心配なら、私はずっと笑えないわ」
僕は、うなだれ、諦めました。
家に帰り、そこから記憶がありません。
翌朝、雨は上がっていました。
イチゴ畑を見に行くと、荒地となって僕を出迎えました。
これで、収入もない。
彼女が、僕に声をかけました。
「もう、あなたのイチゴは食べられないのね。」
僕は泣きそうになりました。
彼女は、生きていくためには、また1から始めないといけないと言いました。
何を育てようかと、僕が考えた、その時、彼女は言いました。
「お米を育てましょう。」
米なんて、育てたことがない。けど、彼女が笑って言うもんだから、僕は勉強しながら、稲を育てました。
秋になると、畑いっぱいに稲が育ちました。
夕方、4時くらい。
家で休んでいると、彼女が慌てた様子で僕のもとへ訪ねてきました。
「一緒に畑にきて!!いますぐ!!」
獣害にでもあったのかと、慌てて外へ出ると、
辺り一面、黄金の絨毯に覆われていました。
その先には、黄金の太陽が、地平線にピッタリとくっついていました。
彼女は、言いました。
「まるで、太陽の指輪みたい。世界で1番綺麗な宝石をプレゼントしてくれて、ありがとう」
おわり。
筆者:はりね。
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