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物語

【フリー物語】悲しむ人に、声の力で。

はじめに

今作品は、筆者が執筆したフリーのシナリオ・台本となっております。朗読練習や朗読配信などご自由にお使い下さい。

本編

今の時代、ラジオなんて聴く人いるのかな?

僕はなんとなく、そんな言葉を彼女に投げかけたことがある。

トラックの運転手さんとかタクシーの運転手さんとかは聴くんじゃない?

そっか、君は運転なんてできないのに、良く聴いてるよね

そんな会話をした、あの時もまた、部屋にはラジオが流れていた。

彼女がよく聴いていたのは、有名な局の番組ではなかった。
地方局の放送で、地方の店の情報なんかを、いつも聴いていた。

僕はラジオなんか興味がなかった。

テレビで動きのあるお笑いを見る方が好きだし、YouTubeを開けば好きなゲームの実況もあるし、アニメの考察を聞き流してるだけでも、ラジオより断然、自分の好みに合った話を、好きな時に好きなだけ聴ける。

でも、彼女は、仕事の無い日曜日はラジオばかり聴いていた。

ある日、私と彼女の住む地域で、とある災害があったんです。

私は職場にいて、彼女も仕事に出掛けていて。

落ち着いてから、一緒に過ごした家、私の実家、彼女の家、彼女の実家、何度足を運んでも、待ち続けても、彼女と会えなくなりました。

打ちひしがれて、何をどうしたらいいか私は分からなくなっていました。

災害発生から数日経ち、私は、ラジオを聴いていました。

彼女が好きだったもの。

いまさらになって、彼女の好きだったものを知ろうと。

遅いのは分かってる。だから、ラジオを聴く度に胸が痛かった。

ある日、思い付きました。

ハガキ投稿というものです。

今は、スマホですぐにラジオにコメントを送れるんです。

気づけば、私は、こんな投稿をしていました。

「私は、あの災害で大好きだった彼女と会えなくなりました。彼女はラジオが好きで、私はラジオが嫌いでした。今になって、彼女の事を知りたいと、ラジオを聴くようになりました。ラジオ局の皆様、災害発生から、ずっと私たちに正確な情報と勇気付ける素敵な言葉を、たくさんありがとうございました。ラジオからの声が、わたしたちに生きる力をくれていました。」

この投稿を、読み上げて下さりました。

その翌日、

ラジオ「昨日、災害の時に大好きだった彼女さんと会えなくなったとおっしゃっていた方から投稿がありましたよね!?実は今、その彼女さんという方から投稿を頂きましたので、読みますね!」

「好きな彼女の声もわからないなんて、ばか」

ラジオ 「彼女さん、うちのラジオパーソナリティですよ!?何も知らないなんて、◯◯さんバカ!」

彼女は、災害発生から、その後ずっとラジオ局に入り浸り、たくさんの人の力になっていたそうです。

わたしは、ラジオが大好きです。

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