みなさん、こんばんは。
今日も一日、お仕事お疲れ様でした。
今このラジオを聴いているあなた。
ちゃんと帰ってきましたか?
無事ですか?
魂、職場に置いてきてませんか?
大丈夫ですか?
もし今、玄関を開けた瞬間にカバンを床へ置いて、そのまま自分まで床に置かれている方がいましたら、まずはお疲れ様です。
今日はもう、それだけで満点です。
ということで今夜のテーマは――
「今日もお仕事お疲れ様」
です。
働いていると、本当にいろんなことがあります。
楽しい日もあれば、
「え?今日まだ火曜日?」
って、カレンダーを三度見する日もあります。
朝起きた瞬間、
「昨日の夜から何秒くらい経った?」
ってくらい一瞬で朝になっていることもあります。
寝たはずなんです。
ちゃんと布団に入りました。
目も閉じました。
なのに体感では、
「はい、では五分休憩終了でーす」
くらいの速さで朝が来る。
そして目覚まし時計が鳴る。
ピピピピピ。
……うるさい。
昨日の夜の自分は、
「明日は早起きして、余裕のある朝を過ごそう」
なんて思っていた。
コーヒーを飲んで。
ニュースを見て。
ちょっとストレッチなんかして。
優雅に家を出る。
そんな計画だった。
でも実際の朝。
目覚まし。
止める。
二度寝。
目覚まし。
止める。
三度寝。
そして突然、
「……ん?」
時計を見る。
家を出る予定時刻の十五分前。
ここから人間は覚醒します。
さっきまで眠気で動かなかった脳が、
突然スーパーコンピューター並みの処理能力を発揮する。
「歯磨き三分」
「着替え二分」
「顔洗う一分」
「朝ごはん……今日は存在しなかったことにする」
「髪……帽子!」
すべてを瞬時に計算。
そしてなぜか、そういう日に限って靴下の片方がない。
昨日まで確実に二足一組だったはずなのに。
右はいる。
左がいない。
靴下界に何が起きたんでしょうか。
年間で、日本中から何百万足もの靴下が消えていると思います。
いつか巨大な秘密基地で発見されるんじゃないでしょうか。
「ここに、これまで消えた全ての左靴下があります」
って。
そしてなんとか家を出る。
ギリギリ間に合った。
駅に到着。
ところが電車が混んでいる。
ものすごく混んでいる。
扉が開いた瞬間、
「これ、人間が入る場所ですか?」
という密度。
それでもみんな乗る。
日本の通勤電車には、不思議な物理法則があります。
もう入らないように見えても、
あと五人くらい入る。
そして乗った瞬間、自分もその物理法則の一部になります。
押される。
押される。
腕が変な方向に固定される。
スマホ見たい。
でも手が動かない。
目の前の人はスマホを見ている。
ちょっとだけ画面が見える。
別に見たいわけじゃない。
でも、目の前にあるから見えてしまう。
ニュースを読んでいる。
スクロール。
ニュース。
スクロール。
猫の動画。
猫。
猫。
猫。
急に猫だらけ。
心の中で思う。
「あなた、猫好きなんですね」
知らない人なのに、少しだけその人の人生を知った気になる。
そして会社に到着。
「おはようございます」
ここで大事なのが声のトーンです。
社会人の「おはようございます」には、いろんな種類があります。
本当に元気な、
「おはようございます!」
普通の、
「おはようございます」
眠い、
「おはようございまぁす……」
昨日飲みすぎた、
「……ぉはょざぃます」
そして月曜日。
「…………おはようございます」
もはや声ではない。
魂から漏れた空気です。
自分の席に座る。
パソコンをつける。
そしてまずメールを見る。
未読。
十二件。
まあまあ。
二十件。
ちょっと多い。
四十五件。
何が起きた。
しかもタイトルを見る。
「ご確認お願いします」
「至急」
「再送」
「念のため共有します」
怖い。
社会人が恐れる言葉ランキングがあったら、
「至急」
かなり上位だと思います。
そしてメールを開く。
長い。
とにかく長い。
スクロールしてもスクロールしても終わらない。
一番下まで行く。
結局何をすればいいのか分からない。
もう一回上から読む。
やっぱり分からない。
そして最終的に近くの人に聞く。
「これって、結局何すればいいんですかね?」
すると相手が言う。
「ああ、それ僕も分かんないです」
安心する。
問題は解決していないのに、仲間がいるだけで安心する。
これが会社です。
そして午前中。
仕事をしていると時計が気になります。
「そろそろ十時半くらいかな」
時計を見る。
9時17分。
嘘でしょ?
体感ではもう三時間働いた。
なのに十七分。
時空が歪んでいます。
逆に昼休み。
ご飯を食べる。
ちょっとスマホを見る。
時計を見る。
休憩残り七分。
なぜ。
仕事中の一時間と昼休みの一時間。
絶対に同じ六十分ではありません。
これはいつか科学者に研究してほしい。
そして待ちに待ったお昼。
今日は何食べよう。
ラーメン。
カレー。
定食。
コンビニ。
毎日悩む。
働く人間には毎日必ず発生する重大な意思決定があります。
「昼、何食う?」
これです。
しかも午前十一時くらいから、頭の片隅にずっといる。
仕事しながら、
「唐揚げ……」
メール返信しながら、
「いや、蕎麦もあり……」
資料作りながら、
「昨日ラーメンだったな……」
そして昼になり、
結局いつもの店。
人間とは保守的な生き物です。
午後。
ここから最大の敵がやってきます。
眠気。
昼ご飯を食べたあと。
暖かい室内。
パソコン。
単調な作業。
眠くならない要素が一つもない。
目が重い。
瞬きが長くなる。
一秒。
二秒。
三秒。
危ない。
そして自分の中で戦いが始まります。
脳。
「寝ろ」
理性。
「仕事中だ」
脳。
「五分だけ」
理性。
「ダメだ」
脳。
「目を閉じるだけ」
理性。
「それが睡眠だ」
そんな戦いをしながら仕事を続ける。
そして午後三時くらい。
ちょっと疲れてくる。
そこでお菓子。
クッキー一枚。
チョコ一個。
これだけで、人間は少し復活します。
すごいですよね。
朝から何時間も働いてボロボロだった人間が、
チョコ一粒で、
「まあ、あとちょっと頑張るか」
となる。
チョコレート会社は、実質日本経済を支えているのではないでしょうか。
そして夕方。
終業時間が近づいてくる。
時計を見る。
あと一時間。
あと四十分。
あと二十分。
あと十分。
心の中ではもう帰っています。
でも。
ここで発生する恐怖のイベント。
上司が近づいてくる。
手に資料。
嫌な予感。
こちらを見る。
嫌な予感。
「ちょっといい?」
出た。
社会人ホラーゲーム。
「ちょっといい?」
この一言。
本当にちょっとだった試しがない。
「ちょっといい?」
「はい」
「これなんだけどさ」
そこから三十分。
四十分。
一時間。
ちょっととは。
国語辞典を開きたくなる。
そしてようやく終わる。
「じゃ、よろしく」
よろしくじゃない。
私の定時を返してくれ。
しかし社会人。
笑顔で言います。
「分かりました」
心の中。
「分かりたくありませんでした」
そして仕事終了。
会社を出る。
この瞬間。
空気がうまい。
外の風が気持ちいい。
ただ会社の建物から外に出ただけなのに、
世界が輝いて見える。
自由。
人類は自由を手に入れた。
イヤホンをつける。
好きな音楽を流す。
コンビニに寄る。
ちょっと高いアイスでも買おうかな。
だって今日は頑張ったから。
そう。
大人になると、
誰かが毎日褒めてくれるわけではありません。
子どものころなら、
テストで百点を取った。
「すごいね!」
運動会で頑張った。
「よく頑張った!」
でも大人になると。
朝起きる。
誰も褒めない。
満員電車に乗る。
誰も褒めない。
仕事する。
誰も褒めない。
ミスしない。
普通。
期限を守る。
普通。
毎日会社に行く。
普通。
でも考えてみてください。
これ、結構すごいことです。
眠いのに起きて。
行きたくない日も行って。
面倒なこともやって。
理不尽なことがあっても、とりあえず一日を終わらせる。
そんな毎日を続けている。
十分すごいです。
なので今日は、私が言います。
朝ちゃんと起きた人。
お疲れ様。
仕事に行った人。
お疲れ様。
学校に行った人。
お疲れ様。
家事をした人。
お疲れ様。
誰かの面倒を見た人。
お疲れ様。
仕事で失敗した人。
お疲れ様。
上司に怒られた人。
お疲れ様。
お客さんに無茶言われた人。
お疲れ様。
今日ほとんど仕事が進まなかった人。
それでも、お疲れ様。
そして今日、
「もう無理」
と思った人。
それでも一日ここまで来ました。
お疲れ様でした。
仕事って不思議なもので、
大きな成功より、小さな出来事の方が記憶に残ったりします。
コピー機が一発で動いた。
ちょっと嬉しい。
エレベーターがちょうど来た。
ちょっと嬉しい。
コンビニで好きなお弁当が最後の一個だった。
勝った。
自販機で飲み物買ったら、もう一本当たった。
今日のMVP。
逆もあります。
急いでいる日に限って信号全部赤。
コピー機が紙詰まり。
パソコンが更新開始。
「更新しています。電源を切らないでください」
今じゃない。
昨日の夜やってくれ。
なぜ私が急いでいる今なんだ。
そして一番怖い。
作っていた資料が保存されていない。
パソコンが固まる。
カーソルが動かない。
この瞬間。
人間は祈ります。
宗教とか関係ない。
全員祈る。
「お願い……」
「動いて……」
「頼む……」
「三十分だけ返して……」
そして画面が動いた瞬間。
「うおおおお!」
心の中ではスタンディングオベーション。
そんな小さな戦いを、
私たちは毎日やっています。
だから帰宅して、
靴を脱いで、
服を着替えて、
ソファに座った瞬間。
「ああ……」
これでいい。
今日はもう十分です。
ご飯を食べてください。
お風呂に入ってください。
好きな動画を見てください。
ゲームしてもいい。
漫画読んでもいい。
何もせず天井を見てもいい。
「今日なんにもしてないな」
なんて思わなくていい。
いや。
仕事しましたから。
一日、生きましたから。
十分やっています。
そして明日のことは――
まあ、
明日の自分に任せましょう。
今日の自分が全部背負う必要はありません。
明日の自分は明日の自分で、
多分なんとかします。
これまでもそうだったでしょう?
「明日ヤバい」
と思った日。
なんだかんだ終わった。
「この仕事無理」
と思った仕事。
なんだかんだ終わった。
「絶対間に合わない」
と思った締め切り。
なんだかんだ、
ギリギリでなんとかした。
社会人というのは、
なんだかんだの積み重ねでできています。
完璧じゃなくていいんです。
百点じゃなくていい。
七十点の日。
五十点の日。
三十点の日。
「今日は会社に行っただけ」
という日。
それでもいい。
むしろ時々、
出勤しただけで百点の日があります。
月曜日とか。
雨の日とか。
寒い日の朝とか。
昨日夜更かしした日とか。
あと、連休明け。
連休明けの出勤はもう、
玄関を出た時点で表彰していいと思っています。
「よく家から出ました」
という賞を作りたい。
賞状。
金メダル。
副賞は有給一日。
いや、それ最高ですね。
そしてもう一つ。
働いていると、ついつい他人と比べます。
同期が昇進した。
友達が転職して給料上がった。
SNSを見ると、
「年収一千万円」
「独立しました」
「海外旅行してます」
「自由に働いてます」
そんな投稿が流れてくる。
こっちはというと、
夜九時。
コンビニの電子レンジの前。
弁当が温まるのを待っている。
「俺の人生……」
なんて思う。
でも大丈夫。
SNSに、
「今日上司に怒られて、帰りに靴擦れして、スーパーで買おうと思ってたプリン売り切れてました」
なんて投稿する人、あまりいません。
みんな人生のハイライトを載せています。
こちらは自分の舞台裏と、
他人のベストシーンを比べている。
そりゃ負けます。
だから今日は、
他人じゃなく、
昨日の自分くらいと比べましょう。
昨日より少し早く起きた。
勝ち。
昨日より一本多くメール返した。
勝ち。
昨日よりちょっとだけ早く帰れた。
大勝利。
帰宅途中にプリン買えた。
優勝。
人生、それくらいの判定でいいと思います。
さて。
もし今、
まだ帰宅途中の人がいたら。
気をつけて帰ってください。
もし今、
家でご飯を食べているなら。
ゆっくり食べてください。
もし今、
ベッドでこのラジオを聞いているなら。
そのまま寝落ちしても大丈夫です。
そしてもし、
明日の仕事を考えて少し憂鬱になっている人がいたら。
明日の仕事は、
明日会社に着いてから考えればいい。
今は勤務時間外です。
あなたの頭の中まで、会社に残業させなくていいんです。
今日は今日で終了。
閉店です。
シャッターを下ろしましょう。
「本日の営業は終了しました」
です。
上司から頭の中で声が聞こえてきても、
「営業時間外です」
お客さんの顔が浮かんでも、
「営業時間外です」
明日の会議を思い出しても、
「明日お願いします」
全部それでいい。
最後にもう一度だけ言わせてください。
今日も働いたあなた。
本当にお疲れ様でした。
今日うまくいった人も。
うまくいかなかった人も。
褒められた人も。
怒られた人も。
忙しかった人も。
暇だった人も。
誰かに感謝された人も。
誰にも気づかれなかった人も。
あなたが今日やったことの中には、
多分、自分では気づいていない誰かの助けになっていることがあります。
送ったメール。
作った資料。
運んだ荷物。
接客したお客さん。
電話一本。
小さな確認。
そんな仕事の一つ一つで、
社会はなんとなく回っています。
派手じゃないけれど、
誰かがやらないと回らない。
それを今日、
あなたがやった。
だから今日は堂々と休んでください。
そして明日の朝。
目覚ましが鳴ったら、
多分また思うでしょう。
「行きたくねえ……」
大丈夫。
正常です。
その気持ちのまま起きればいい。
布団の中で五分くらい抵抗してもいい。
でも寝坊だけは気をつけましょう。
靴下も今夜のうちに探しておきましょう。
左側。
特に左側。
それでは今日はこの辺で。
みなさん。
今日も一日、
本当に、
本当に、
お仕事お疲れ様でした。
明日も百点を取る必要はありません。
六十点くらいで帰ってきましょう。
そして帰ったらまた、
「今日もなんとか終わったな」
って笑えれば、それで十分です。
それでは。
今夜くらいは仕事のことを忘れて。
ゆっくり休んでください。
おやすみなさい。
そして――
明日の自分、あとは頼んだ。


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