こんばんは。
今日も一日の終わりに、少しだけゆっくりしていきませんか。
今日のテーマは
「初恋の人」です。
初恋。
この言葉を聞くだけで、なんとなく胸の奥が少しくすぐったくなる人もいるんじゃないでしょうか。
もう何年も前のことなのに、なぜか名前だけは覚えていたり。
顔は少しぼんやりしているのに、笑ったときの表情だけは覚えていたり。
一緒に帰った道とか、たまたま隣の席になった日のこととか。
大人になってから考えると、本当に些細な出来事なのに、当時の自分にとっては、それが一日の中で一番大きな出来事だった。
初恋って、そんな不思議な記憶だと思います。
僕にも、初恋と呼べる人がいました。
今になって考えると、本当に恋だったのかは分かりません。
ただ、その人が教室にいるだけで、少し嬉しかった。
朝、学校に着いて、その人の姿を見つける。
それだけで、
「あ、今日もいる」
って安心する。
もちろん、毎日学校に来るんだから、いるのが普通なんですけどね。
でも子どもの頃って、それだけで嬉しいんです。
特別な会話をしたわけでもありません。
手をつないだこともない。
告白なんて、もちろんできませんでした。
たぶん相手は、僕がそんな気持ちを持っていたことすら知らなかったと思います。
でも僕にとっては、確かに特別な人でした。
その子はよく笑う人でした。
誰かがくだらないことを言っても笑うし、先生がちょっと言い間違えただけでも笑う。
笑い声が教室に響くと、なんとなく僕まで嬉しくなる。
でも不思議なのは、僕自身が面白いことを言って笑わせようとは、あまり思わなかったことです。
むしろ、話しかけるのが怖かった。
好きだから話したい。
でも、好きだから話せない。
今考えると、すごく矛盾していますよね。
普通なら、好きな人とはたくさん話したいはずなのに。
目が合っただけで慌ててそらしたり。
廊下ですれ違うときに、何でもない顔をしたり。
本当はその人のことばかり気にしているのに、
「別に気にしてません」
みたいな顔をしている。
初恋って、たぶん世界で一番不器用な恋なのかもしれません。
ある日、席替えがありました。
学校の席替えって、子どもの頃は一大イベントでしたよね。
くじを引いて、自分の席を確認して。
仲の良い友達の近くだったら喜ぶ。
ちょっと怖い先生の真正面だったら落ち込む。
そして、好きな人の隣だったら――
心の中では大事件です。
その日、僕はその子の斜め後ろの席になりました。
隣ではありません。
でも、かなり近い。
それだけで、しばらく嬉しかったことを覚えています。
授業中、その子が消しゴムを落としたことがありました。
僕の机の近くまで転がってきました。
今なら普通に拾って、
「はい」
で終わる話です。
でも当時の僕にとっては違いました。
心臓が妙に速くなって。
拾う。
渡す。
それだけなのに、すごく緊張する。
そしてその子が、
「ありがとう」
って笑った。
たったそれだけ。
でも、その日の帰り道。
僕は何度もその場面を思い出していました。
今考えれば、本当に小さな出来事です。
でも初恋って、たぶんそういうものなんですよね。
大人になったら忘れてしまうような出来事が、その頃は宝物みたいに感じられる。
話せた。
目が合った。
名前を呼ばれた。
一緒の係になった。
帰る方向が少しだけ同じだった。
その一つ一つが、妙に嬉しい。
そして、少し苦しい。
好きという気持ちを誰にも知られたくないのに、本当は誰かに気づいてほしい。
そんな気持ちだった気がします。
ただ、初恋って、ほとんどの場合、きれいなまま終わるわけではありません。
僕の場合もそうでした。
ある日、その子に好きな人がいるという噂を聞きました。
別のクラスの子でした。
もちろん、本当だったのかは分かりません。
子どもの頃の噂なんて、かなり適当ですからね。
でも、その話を聞いたとき。
胸の奥がすっと冷たくなった感覚は、今でもなんとなく覚えています。
別に付き合っていたわけでもない。
告白したわけでもない。
むしろ僕の気持ちは、相手に何一つ伝わっていない。
なのに、失恋したような気持ちになった。
その日は、その子のことをあまり見ないようにしていました。
たぶん見たら、気持ちが顔に出そうだったから。
でも結局、気になって見てしまうんですよね。
楽しそうに友達と話している。
いつもと変わらない。
変わったのは、自分の気持ちだけ。
そのとき初めて、
「好きになるって、楽しいだけじゃないんだな」
と思った気がします。
そして季節が過ぎて。
クラスが変わって。
少しずつ話す機会も減っていきました。
中学生になって。
高校生になって。
新しい友達ができて。
別の誰かを好きになったり。
そうやって、いつの間にか初恋の人は、自分の日常からいなくなっていました。
でも、完全に忘れたわけではないんですよね。
ふとした瞬間に思い出す。
昔よく通った道を歩いたとき。
学校の匂いを思い出したとき。
懐かしい曲を聞いたとき。
夏の夕方の空を見たとき。
何かのきっかけで、その頃の自分まで一緒に戻ってくる。
そして思うんです。
「あの頃の自分、本当に好きだったんだな」
って。
初恋の人そのものを懐かしんでいるのか。
それとも、あの頃の自分を懐かしんでいるのか。
大人になると、少し分からなくなります。
たぶん両方なんでしょうね。
初恋って、その人だけの記憶じゃないんです。
その頃住んでいた街。
通っていた学校。
友達。
放課後。
帰り道。
季節の匂い。
全部がセットになっている。
だから初恋の人を思い出すと、青春そのものを思い出す。
そして、もし初恋が叶わなかったとしても。
それは決して悪い思い出ではないと思います。
むしろ、叶わなかったからこそ、きれいなまま残っている部分もある。
もし付き合っていたら。
喧嘩していたかもしれない。
嫌なところを知ったかもしれない。
普通に別れていたかもしれない。
でも、何も始まらなかった恋は。
ずっと、
「もしあのとき」
という形で残る。
もし告白していたら。
もしもっと話していたら。
もし違うタイミングだったら。
そんな想像を、何年経ってもできる。
少し切ないけれど。
それも、初恋の特別なところなのかもしれません。
皆さんの初恋は、どんな人でしたか?
よく笑う人だったでしょうか。
足が速い人。
勉強ができる人。
スポーツが得意な人。
優しい人。
ちょっと意地悪な人。
それとも、なぜ好きになったのか、自分でも分からない人だったでしょうか。
恋って不思議ですよね。
条件を並べて好きになるわけではありません。
ある日突然、
「あれ?」
って思う。
その人が誰かと話しているだけで気になる。
声を聞いただけで振り向く。
気づいたら、その人を探している。
そして、それが何なのか分からないまま。
あとになって、
「ああ、あれが初恋だったんだ」
と気づく。
僕は、大人になってからの恋よりも、初恋のほうが純粋だったとは思いません。
大人の恋にも、大人なりの純粋さがあると思うから。
でも初恋には、一度しか経験できない特別さがあります。
「人を好きになる」という感情を、初めて知る瞬間。
嬉しい。
緊張する。
苦しい。
会いたい。
でも近づけない。
その全部を、初めて経験する。
だから強く記憶に残るんでしょうね。
もし今。
初恋の人に会えるとしたら。
皆さんは、会ってみたいでしょうか。
僕は……少し迷います。
会ってみたい気持ちもあります。
今、どんな大人になっているんだろう。
元気なのかな。
幸せに暮らしているのかな。
聞いてみたい。
でも同時に。
会わないほうがいいような気もするんです。
僕の記憶の中では、その人はずっと、教室で笑っている。
制服姿のまま。
夕日の差す教室の中。
あの日のままです。
その記憶は、現実とは別の場所に置いておいてもいいのかもしれません。
思い出って、更新しなくてもいいものがありますから。
初恋の人。
名前を思い出せる人。
顔だけ覚えている人。
もう完全に連絡が途絶えている人。
今でも友達の人。
もしかすると、初恋の人と結婚した人だっているかもしれません。
それぞれ違うと思います。
でも共通しているのは、その人が一度、自分の人生の中で特別だったということ。
それだけで、十分なんじゃないでしょうか。
もし今夜、昔の初恋を思い出したなら。
無理に連絡を取らなくてもいい。
探さなくてもいい。
ただ、
「あの頃、好きだったな」
って。
少しだけ思い出してみてください。
そして同時に。
誰かを好きになることを初めて知った、昔の自分のことも思い出してあげてください。
不器用で。
恥ずかしくて。
何も言えなくて。
でも一生懸命だった自分。
きっと、その頃の自分がいたから。
今の自分がいるんだと思います。
初恋は、終わった恋というより。
心のどこかに残っている、小さな栞みたいなものなのかもしれません。
人生という長い本を読み進めて。
ずいぶん先のページまで来たとき。
ふと、その栞を見つける。
そしてページを戻してみると。
そこには、もう戻れない時間と。
忘れたと思っていた気持ちが残っている。
少し恥ずかしくて。
少し切なくて。
でも、どこか優しい。
そんな記憶。
それが、初恋なのかもしれません。
それでは今日はこの辺で。
今日も最後まで聴いてくださって、ありがとうございました。
今夜は、少しだけ昔のことを思い出しながら。
ゆっくり休んでください。
また次回、この場所でお会いしましょう。
おやすみなさい。


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